ベーシストのアニメ語り 〜時々音楽〜

ベーシストが音楽よりも優先してアニメ、映画などオタクコンテンツを語るブログです。

2020年に観る「ラブ&ポップ」

久々のブログ。

 

仕事で「あの素晴らしい愛をもう一度」の譜面を作ることになったのでYoutubeで曲探し。

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1971年発売のヒット曲なので知らない人も多いかもしれませんが、大好きなんです、僕。

 

とはいえ流石に僕も1971年リアルタイムと言うほどのおじさんではない。知ったのはこの映画がきっかけだった。

 

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ラブ&ポップ

 

エヴァンゲリオンの監督、庵野秀明の初実写監督作品として話題になった1998年の映画。そして主役の三輪明日美が歌うエンディングテーマが上記の「あの素晴しい愛をもう一度」のカバーだった。

 

97年、エヴァンゲリオンにどっぷりハマって、エヴァのことを考えない日はないくらいになった。それからエヴァとそれに関する全てのことにアンテナを張っていた僕にとって、庵野秀明の実写映画はもちろんチェックしないといけないものだった。

劇場まで足を運ぶことはなく(当時中学生だった)、後にレンタルビデオで観ることになるのだが、テーマソングのあの素晴しい愛をもう一度のCDは発売日に買いにいった。当時はまだ8cmシングルだった。

 

曲は歌詞を覚えるくらい繰り返し聞いたものの、映画は一度見たきりだった。

原作は村上龍の小説。当時社会問題になっていた女子高生の援助交際をテーマにした鮮烈な内容だったのでイメージとしては強く残っていたが、流石に一度しか見てないので細部までは殆ど覚えていなかった。

 

そんな中、あの素晴しい愛をもう一度の原曲を聞いた流れでYoutubeに落ちてたラブ&ポップのエンディング映像を発見。見てみることに。

 

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5分43秒、目を離せなかった。ずっと、なんか胸がずっと、痛い。

四人の女子高生が渋谷川をバシャバシャと歩き続けるだけの映像。これが何故そんなに胸を打つのか、どうしても語りたくなったからこうして久しぶりにブログを書いたのに、言葉で説明ができない。語彙よどこへ……

やっぱり庵野秀明の映像って、アングルなのか色合いなのか何故か心をざわつかせる。

 

とにかく痛くざわついた胸を鎮める、というより更にざわつかせる為に約20年ぶりに本編を観ることに。

 

本編はエヴァや他のアニメ監督作品、最近のシン・ゴジラに至るまで使われている、庵野印な特殊アングルがこれでもかというくらい多様されいた。それを食傷気味に感じて評価を低くしている人もいて、まあそういう感想も分かる。

でも僕はそういう特殊なアングルが好きなので(単純)、最初から目を奪われた。

 

ざっくりいうと12万円の指輪を買うために援助交際をする女子高生の一日を追うというストーリー。

ストーリーは単純だが映像、音楽、多用されるモノローグ(主演の三輪明日美の拙い喋りが逆に良い)などから妙なリアリティが常に出ていて、”あの時代”に一瞬にして引き戻された。

 

これは90年代後半をリアルに生きていない世代に伝わるのか、自分がこんなにもエモーショナルな気持ちにさせられるのはただのノスタルジーなのか、それは分からない。

けど当時中高生だった自分には刺さらなかった(あまり見たときの思い出がないのでたぶんそうだったと思う)ものが、今こんなにも刺さるのかという衝撃が凄かった。

 

90年代後半は世紀末でノストラダムスの大予言(ノストラダムスの大予言 - Wikipedia)があったり、神戸の連続児童殺傷事件、地下鉄サリン事件阪神大震災、少年犯罪や援助交際が話題に登った時代だった。

そうやって世の中が劇的に変わっていく中、庵野秀明が描き出すものは「世界の終わり」が近づいているのか?みたいな時代の空気とリンクしていたように思える。

 

だからエヴァはあそこまでヒットしたんだろう。

 

ヱヴァンゲリヲン新劇場版シリーズはもちろん大好きで、コロナの影響で延期になってしまったシン・エヴァンゲリオンの公開も待ち遠しくて仕方ない。

だがこのラブ&ポップを観て、シン・ゴジラを思い出してみて思った。エヴァ新劇場版シリーズには”庵野秀明っぽさ"があまりないと。

圧倒的な映像センスは相変わらず感じるが、自身は総監督に落ち着き、摩砂雪

鶴巻和哉といったガイナックス時代からの盟友に監督を任せている。そうすることによって新劇場版シリーズは過去の新世紀エヴァンゲリオンに比べて随分ポップなものになったと思う。それは単純に庵野秀明が大人になったから、というだけなのかもしれないが、どちらかというと複数の監督が入ることにより「庵野秀明」という味が薄れてしまったような印象が強い。

 

新劇場版について今までそんなこを考えたことはなかったが、ラブ&ポップを観てふとそんなことを思ったのであった。

たぶんシン・エヴァンゲリオンがどんな終わり方をしようとも僕は好意的に受け止めると思う(ちなみに僕はエヴァQも肯定派)。だだ願うことなら、胸焼けするくらいの庵野秀明味の料理が食べたい。